日本の住まいと暮らしを支える建設業界。建設業界はその使命を果たすべく、責任を持って建築物の施工に当たっています。建設業界のマークは、業務に安全性を求められるものなので、コーポレートアイデンティティの一環でそれが一目でわかるようなデザインになっているものが多いです。
今回はそんな建設業界のロゴマークについて実際に見ていきましょう。
建設業界の全体傾向して青色と緑を好む傾向があります。青色も緑色も、安全を象徴する色。他業界では熱意を表す色などでよく見られる赤色は建設業界においては危険を象徴する色として扱われることが多いため、使われる傾向が少ないようです。
これは家電業界など、機器を扱う企業にも比較的多く見られる傾向です。ここでは大手建設会社のロゴマークについて個別に取り上げていきたいと思います。
大手スーパーゼネコンとして知られている清水建設。技術力に定評があり、独自の技術で競争優位に進めていく力が強いです。清水建設のシンボルマークは、青い眼をデザインしたものとなっており、清水建設の事業が多角化及び国際化の色を帯びてきた1987年に制定されました。
これは清水建設の未来を見通す先見性を象徴するものとしてデザインされたようです。ロゴマークの青は、空と海と水をイメージしており、コーポレートマークにおいて、一部使われている赤は人間を、黒は宇宙を、下地の白は純白を表しています。
売上高約1兆9000億円を記録し、業界最大手ゼネコンとして知られている大林組。建築に限らず、土木やエンジニアリング、原子力など、事業の多角化を広く行っている企業として知られています。そんな大林組のロゴマークは、青、白、緑を基調とした菱形の形をしたロゴとなっています。
末広がりな下部の緑で地球を表していると同時に、大林組の限りない発展の願いが込められています。上部の青色部分は、矢印として上を指しているデザインとなっており、この矢印は『新たな価値を作り出す活力ある知識集団として常に向上を目指す大林組の姿勢』を示しています。
鹿島建設も業界最大手級のゼネコン会社として知られています。『現場第一主義』として知られ、利益管理の面も含めて現場に任せるなど、現場の自由度が非常に高いことで有名です。建設業界の中では珍しく、赤を基調としたロゴマークとなっています。
鹿島建設のロゴマークは、大工道具の1つである曲尺に一本の白線が貫く『カ』のマークであり、曲尺は技術を象徴しています。明治期に大工集団から始まった組織であり、大工に対するこだわりが受け継がれたロゴマークとなっています。
実際、明治初期に制定された、曲尺に『カ』の商標の特徴を受け継いでいます。
市街地の再開発事業に定評のある大手ゼネコンとして知られる大成建設。大成建設のロゴマークは、1990年4月に制定され2003年に社章として使用されました。青と緑を基調としたロゴマークで、こちらも落ち着きのある配色となっています。
縦にまっすぐ伸びる青色は優れた技術を表し、弧を描くように伸びる緑は地球をベースに、大地や海、太陽などの自然に関する多義的な意味を持っています。左上にある赤い丸は、明るい未来を表しています。縦に伸びる青と、横に伸びる緑の線がクロスすることにより、それらとうまく調和しあいながら、ますます活動を続けていく人間と大成建設の活力を表現しているとされています。
設計と施工を一貫して担当することで知られる竹中工務店。企業のイメージとして、職人気質をイメージする方も多いのではないでしょうか。竹中工務店のロゴマークは、建設業界では比較的珍しいワインレッドをメインに採用したロゴマークとなっています。
これは高品質と高級感のシンボルとされています。また竹中工務店の文字の部分がこのワインレッドをより引き立たせるグレーで描かれています。社章は1918年に制定されたのち、1979年に改定。竹中の二文字を円形にアレンジしたもので、人の和を象徴しています。
長谷工コーポレーションは、マンション事業に関わるすべての事業に広く対応できる企業として知られています。いわゆる大手ゼネコンに比べると売上高はやや劣りますが、それでも8000億円ほどの売上高を誇ります。そんな長谷工コーポレーションのロゴマークは『都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する』と言う企業理念が表されているようです。
こちらも青と緑をふんだんに使った配色で、このほかに中央に赤色の丸があるレイアウトとなっています。長谷工の頭文字のHをモチーフとしており、都市生活の青、人間のエネルギーの赤、自然環境の緑で構成されています。
前田建設工業も準大手ゼネコンの一角を占めており、土木事業、すなわちダムやトンネルの建設にに強みがあります。こちらも青と緑を基調とした配色となっており、他のカラーは基本的に使用されていません。頭文字であるMをかたどったシンボルマークには、『天空の地平線』の意味が込められており、高品質なテクノロジーの信頼性と環境にうまく調和した建築物デザインを目指す姿が描かれています。
また前田建設工業のロゴマークの特徴は、そのリアルなグラフィックにあります。これには建造物そのものだけでなく、施工のプロセスも含めて、つまり全てにおいて美しくありたいと言う願いが込められています。
こちらも準大手ゼネコンとして知られている戸田建設。戸田建設は、歴史的建造物に数多くの実績を持っており、公共施設を数多く手がけていることで知られています。戸田建設のロゴマークは、シンプルで落ち着いた配色の多い建設業界ロゴマークにおいては、少し異質に思えるようなデザインかもしれません。
特徴的な多様な図形は、個性やアイディアの集合体を表しており、これらの集合体で『戸』の文字を表しているとされています。
今回、建設業界のロゴマークとして主要な大手ゼネコン5社と、一部の準大手ゼネコン会社のロゴマークを見てきました。普段生活していると、こうした建設会社のそれぞれの強みや特徴はなかなか見えにくいものですが、ロゴマークに描かれた特徴をしっかりと見ていくことで、企業の強みや理念を感じとれるつくりになっています。